【ブログ】日銀金融政策決定会合の概要(18年6月):サプライズなし


本日(18/6/14)、日銀が金融政策決定会合を行い、金融緩和策の現状維持を賛成多数で決めました。

特段サプライズはなく、市場における影響は限定的でした。以下で概要などをお知らせします。

米欧の政策金利に関する関連記事は以下をご覧ください。
【ブログ】ECB理事会の概要(18年6月):総じてハト派
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日銀の金融政策


1.日銀の金融政策とは?

日本銀行は、わが国の中央銀行として、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するため、通貨および金融の調節を行うこととされています(日本銀行法第1条、第2条)。調節にあたっては、公開市場操作(オペレーション)などの手段を用いて、長短金利の誘導や、資産の買入れ等を行っています。

2.現状の金融政策運営

金融政策として、現在、以下の2つの行っています。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
資産買入れ方針

①については、以下のような短期金利と長期金利の誘導目標そして、金融市場の調節を続けています。
・短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する
・長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。
買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。

②については、長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりにするとしています。
・ ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
・ CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。

これを「長短金利操作付き量的・質的緩和」と呼ぶことがある。

そして、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」を主軸とする政策です。

3.金融緩和(政策金利引き下げ、或は、低水準に維持すること)の目的

景気が後退した場合や悪化した場合などに金利水準を引き下げる金融政策を取ります。この場合、利下げを行うと市場金利が下落し、企業や個人がお金を借りやすくなると共に、設備投資や個人消費が刺激されることで、景気の回復が期待されます


各国の為替レートと政策金利


以下は各国の政策金利です。リーマンショックによる世界的な危機により、日本を含めて各国は政策金利を引き下げてきました。
いち早く利上げに転じた米国FOMCでは6月13日に利上げを決定したほか、利上げペースが加速するとしました。
6月14日にECB理事会は資産購入額を減らすことを決定し、さらに今年12月に終了するとしました。


(出所:ダイヤモンドザイ)

各国金融緩和を終了して出口に向かっていますが、日本は依然として金融緩和を終了することができる状態にありません。

いつまたリセッション(景気後退)となるかわかりません。その際に、政策の自由度があるかないかという観点からすると、当然、日本の場合は他国と比べて自由度がないということになります。


声明文と黒田日銀総裁会見


1.物価が上昇しない要因について

黒田日銀総裁は、米欧と比較して日本だけが物価が上がらない状況について、
・企業や家計に残った根強いデフレマインドが原因との見方
・非製造業で省力化投資や情報関連投資が進み、「生産性が相当上がってきている」
と説明しました。
(後者の方は、AIを含めたIT化がさらに進むことを示唆していると思われます。そういった銘柄は有望だと推察されます。関連記事:チャート(テーマ):AI関連(53銘柄)

2.金融政策の今後の見通しについて

黒田総裁は、金融政策の今後の見通しについて、
・金融緩和の正常化へ向けた「具体的な手法やプロセスについて語るのは時期尚早
・適切な時期に市場と対話するとしたが、現時点での説明は市場を混乱させるとして時期も示さなかった
・「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当
と説明しています。

3.景気判断について

景気判断は「緩やかに拡大している」に据え置いた。足元の物価上昇率は「0%台後半となっている」として、4月の「1%程度」から変更した。


個人的な見方


現状の日銀の金融政策はかなりの劇薬という見方をしています。

特にETF購入は市場をゆがめているとも考えられます。一つの見方としては、ミニバブルを作り出しているといえると思います。

日本の財政状態に問題がなければまだよいかもしれませんが、財政状況に問題があります。

何らかのショックで大きな危機を迎えて、日本株が売られたとき、日銀の信用問題にも影響を与えるので、売りが売りを呼ぶ展開が予想されます。

一昔前になりますが、アナリストをしていた時、欧米の債券投資家からは日本の財政は大丈夫かとよくいわれました。アジアの株式投資家からは成長性のない日本になぜ投資しなくてはならないのだといわれたことがあります。

現状は円安やアベノミクス効果で景気拡大していますが、一昔前からは、債務も悪化し、少子高齢化も進んでいます。これが逆回転したとき、財政的な問題に加えて少子高齢化が進む日本が立ち上がることは非常に困難な状況にあるのではないかと想像してしまいます。(インバウンドとAIによる生産性向上が日本を救いうる数少ない材料とみていますが・・・)

実力以上の高い山を作れば、必要以上の深い谷を作ることになると思われます。

10年後、20年後はどうなっているでしょうか?今よりも将来の次世代が諸先輩が築き上げてきたこの「素晴らしい日本」を破綻することなく、継承でいるような運営を関係者に行ってほしいと心から願っています。

関連記事:【ブログ】イタリアより日本は深刻(日経:大機小機)を読んで(18/6/2) 


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