【ブログ】FOMCの概要(18年6月):タカ派な内容


FOMCは、6/12-13の定例会合が行われ、次の内容が公表されました。
①フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25ポイント引き上げ、1.75-2%のレンジに設定
②失業率が低下し、インフレ率が従来の見通しよりも速いペースで上昇していることから、2018年通年の利上げ予測は4回に上方修正

公表された内容などについてみていきたいと思います。


そもそもFRBとは?


FRBとは、1946年雇用法にその源流を持ち、77年連棒準備改革法によって定められた「最大限の雇用と物価の安定」という二つの使命を持っています。

その使命を果たすために、政策金利の引き上げや引き下げを通じて金融政策を運営します。

政策金利引き上げ:利子率上昇→投資・消費の縮小→GDPの減少
政策金利引き下げ:利子率低下→投資・消費の拡大→GDPの増加

その金融政策は、FRBの理事と各地区連銀の総裁が参加するFOMCで決定します。

日銀の目的は、「物価の安定」と「金融システムの安定」であるということが日本銀行法で定めらえれています。

 


声明文について


1.景気見通しについて

「委員会はFF金利の目標レンジのさらなる漸進的な引き上げが、経済活動の持続的拡大、力強い労働市場環境、およびインフレ率が中期的に委員会の対称的な2%目標付近で推移することと合致すると見込んでいる」としているが、利上げペースを速めても経済成長は引き続き速やかに拡大するという見方を示している

2.文言削除

「FF金利は今後しばらく中長期的に有効となる水準を下回る可能性が高いと予想している」との文言が削除された。

そのほかの変化点としては、
・「さらなる漸進的な調整」という文言が「さらなる漸進的な引き上げ」に置き換えられた
・前回声明の「市場に基づくインフレ調整指標は低い水準が続き、調査に基づく中長期的なインフレ期待の指標」から「中長期的なインフレ期待の指標は、ならしてみるとほとんど変わっていない」と簡素化された

出所:Bloomberg


ドットチャートの状況


1.ドットチャートとは?

ドットチャートとは、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが予想する、米国の政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの水準を、それぞれひとつの点(ドット)として散布図化した「政策金利の見通し」のことをいいます。
毎年3、6、9、12月に米連邦準備理事会(FRB)が公表します。

2.金利見通しについて、

そもそも、2017年12月時点での政策金利は1.25-1.50%という水準でした。
その政策金利が2018年、2019年、2020年にどのような水準になるかとメンバーが想定しているかをドットチャートから確認できます。
上が6/12-13のFOMCのドットチャートで、下が前回のFOMCのドットチャートです。

2018年について、比較してもらうと、
①2.25-2.50%が6月は5人、3月は4人
②1.75-2.00%が6月が2人、3月は0人(1.5-1.75%が2人)
となりました。

メンバーの金利見通しが上方修正されたことがご理解いただけると思います。
最近の経済指標をみてもそのように考えるのは妥当だと思われます。
(関連記事:【ブログ】週間経済指標

このような変化を受けて、2018年末の金利水準は、1年を通じて1%引き上げられて2.25-2.50%になるという見通しに上方修正されました。一回の利上げを0.25%とした場合は4回の利上げ回数になるので、前回の年3回から年4回に利上げ回数が増えるとされています。

《6月12-13日(出所:FRB)》

《3/20-21(前回)(出所:FRB)》

なお、2019年については、中央値で年3回の利上げが行われる見通しと報道されています。


経済指標見通し


また、FOMCでは経済指標の見通しも公表しています。下の3つのグラフから確認できます。
上から①実質GDP成長率、②失業率、③個人消費支出インフレ率となっています。

特徴は以下の通りです。
①実質GDPは、2018年の2.8%をピークに2019年は2.4%、2020年は2.0%と低下。長期的には1.9%で推移する。
(2018年について、3月の2.7%という見通しから2.8%に上方修正)

②失業率は、2018年は3.6%をピークに2019年は3.5%、2020年は3.5%と低下。長期的には4.5%に上昇して推移する。
(2018年について、3月の3.8%という見通しから3.6%に下方修正)

③個人消費支出インフレ率は、2018年は2.1%をピークに2019年は2.1%、2020年は2.1%と低下。長期的には1.8%に上昇して推移する。
(2018年について、3月の1.9%という見通しから2.1%に上方修正)

上記のように失業率も少なく、経済も拡大している状態なので、景気の過熱とインフレを抑制するために政策金利を引き上げることで調整を図ろうとしています。


識者はこう見る(ロイター)


ロイターの「識者はこう見る」では以下のようなコメントが報じられています。

・マイク・ターウィリガー氏
インフレ圧力が強まれば9月の0.5%引き上げもありうる
-新興国のボラティリティは高まっているが、FRBのスタンスはタカ派姿勢を示しておりぶれていない

・イリヤ・ゴフシュテイン氏
-2019年の金利見通しは大きな驚きだった。市場は長期的に利上げペースが加速するとの見通しに反応
米利上げ加速は新興国資産には悪材料だが、新興国資産の幾分売り疲れの感もある

・アモ・サホタ氏
-金利は当面は中立水準にとどまるとの文言を削除した。これはよりタカ派的

・ヘイディ・ラーナー氏
-年内はあと2回の利上げの見通しを示したことは意外

・スティーブン・マソッカ氏
-4回の利上げを想定したことは失望感を誘った
-金利上昇は投資の競争を高めるほか、経済成長を減速させる恐れもあり、株式市場にとっては良いニュースではない

総じて、FOMCの声明は、「想定外にタカ派(強気)」とみていると認識できると思います。

(出所:ロイター


個人的な見方


インプレッションとしては想定通りのタカ派な声明文であり、さらに言うと、パウエル議長はソフトランディングさせることができたという見方をしています。

ただし、この影響が世界経済に波及しないということはないと考えています。

6/14の14時過ぎですが、米長短金利差は2007年以来で初めての40bp(0.4%)を割り込みました。ドル円も200日平均線の100円20銭を下回る水準(110.12円)となりました。

今後、何らかのショックが発生しないかどうか、十分に注意する必要があると思われます。

なお、中央銀行の利上げのインセンティブの一つは、リセッションに備えて利下げの余地(政策の自由度)を持っておきたいということがあるとよく言われます。

現在、米国は利上げ、欧州は金融緩和を終了させようとしています。日本はどうなのでしょうか?
次にリセッションに陥った時、日銀は金融政策をどのような形で進められるのか?

そのような事態に陥らないことを心から祈っています。


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