18/5/23、日経平均は270円下げました。
その要因は
①米朝首脳会談の実現性
②加計問題などによる国内政治リスク
③トルコリラ・円の急落
とされています。
<トルコの情勢>
トルコの情勢については、日経新聞の報道(18/4/25)によると、以下の通りとなっています。
・リラ安進行と物価安定支援のため政策金利を0.75%引き上げ13.5%にした
・CPIは10.2%上昇と中央銀行目標の二倍
・トルコの対外債務残高は5年間で約4割増えて約34兆円となる
<日米欧の金融緩和から米金融引き締めががもたらしたもの>
この現象について考察してみると、
リーマンショック以降の日米欧の同時金融緩和
→新興国などへの多額の投資・資本流入に伴う世界同時の経済成長
→米国の金融引き締めへの転換
→米金利上昇
→ドル高・自国通貨安と資金流出
→通貨安により輸入価格上昇などの影響を受けてインフレ進行
→短期金利の場合は金利負担の増加や自国通貨換算での債務残高増加
→デフォルトの可能性から資本流出
というような流れがトルコに生じていると考えられる。
<トルコ・リラの状況>
下のグラフはトルコ・円の推移であるが、2016年1月は1リラ=40円強だったものが、18/5/23には1リラ=22円台までリラは減価することになった。
トルコの場合、経常赤字が大きいとか、外貨準備高の水準が債務対比で少ないということであり、当然その影響は大きいと推察されますが、新興国などにおける資本流出がネガティブな影響は多かれ少なかれ生じるものと考えられます。(関連記事:https://jp.reuters.com/article/turkey-argentina-idJPKCN1IM0CD)
<新興国の株価水準>
以下のグラフはMSCI Emerging Mareketsであるが、日米欧の株価水準は回復しているものの、新興国株は軟調なまま推移しています。
米利上げの影響が生じ始めていると推察されます。
<ソフトランディングかハードランディングか?>
個人的には、FRBはひずみが生じそうな状態を認識しつつ、ソフトランディングさせようとしている印象をもっています。
利上げペースを加速しない方向であったり、インフレが一時的にオーバーシュートしてもよいというFRBの見解は、利上げを進めるとそのネガティブな影響が大きくなると考えているからではないかと思えます。
当然ソフトランディングで良いと思いますが、調整があることを想定した方がよいと思われます。
トルコの変化が確認されましたが、まだ新興国からの資金流出は始まったばかりでトルコの問題もすぐに収束するように思えません。
なお、ギリシャ危機はヨーロッパが支援しましたが、トルコは特定の国が支援することはないと思います。トルコがデフォルトした場合はハードランディングということになるでしょうが、その際にはトルコ危機として大きく世界経済に影響を与えることになると考えられます。
18/5/24、トルコ中央銀行は3%の緊急利上げを行ったということです。応急処置だと思いますが、その症状は決して軽いものではないと推察されます。(関連記事:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3089175024052018000000/)