イタリアの政治情勢についてまとめてみました。
主な登場人物
今回このブログにおける登場人物(関係者、団体)は次の通りです。
・五つ星運動:ポピュリズム政党。以前はEU離脱を主張したこともある。法人税減税、歳出拡大を公約。日本のように経済成長にて債務残高比率を減少させるとしている
・ディ・マイオ:五つ星運動党首
・同盟:移民批判を展開し欧州連合(EU)に懐疑的なスタンス。中道右派連合のうちの一つの政党だが、極右政党とも称される
・マッタレッラ大統領:中道左派連合の支援を受けて2015年に大統領当選
・コンテ氏:五つ星運動と同盟との連立政権において次期首相候補とされた。
選挙
20183月4日に選挙が行われたが、その結果は以下の表の通り。(出所:Wikipedia)
大統領を支援した中道左派連合が大きく議席数を落とす結果。
そして、五つ星運動は単独政党としては第一党となりました。
政党 | 中道右派連合 (政党連合) |
五つ星運動 | 中道左派連合 (政党連合) |
---|---|---|---|
前回選挙 | 125(代議院) 117(元老院) |
109(代議院) 54(元老院) |
345(代議院) 127(元老院) |
獲得議席 | 265(代議院) 137(元老院) |
227(代議院) 112(元老院) |
122(代議院) 60(元老院) |
議席増減 | 138(代議院) 20(元老院) |
114(代議院) 58(元老院) |
227(代議院) 65(元老院) |
得票率 | 37.0%(代議院) 37.5%(元老院) |
32.7%(代議院) 32.2%(元老院) |
22.9%(代議院) 23.0%(元老院) |
イタリア情勢
中東の政情不安から移民などが増えている。また、EUの財政規律ルールのもとに緊縮財政を続ける中、財政緊縮路線は失敗という不満が増加している模様。
このようなイタリア情勢のもと、インターネット政党として始まった「五つ星運動」は幅広い支持を得る結果となった。左派連合は大きな成果を出していないということから支持者の多くを失った。
なお、イタリアの債務残高の対GDP比率は132%であり、ユーロではギリシャに次いで高い水準。
連立政権
「五つ星運動」の議席数は単独政権には不十分であるため連立政権を模索。5月に入り「同盟」と連立政権を組むことが決定し、その2党がコンテ氏を大統領候補として推した。
コンテ氏は組閣のために閣僚名簿を作成したが、拒否権をもつマッタレッラ大統領はEU懐疑派の経済相候補者を支持できないとして拒否。
コンテ氏は組閣をあきらめた。3月4日から続いた政治の空白期間はまだ続くことになる。
今後の展開
マッタレッラ大統領は暫定的にIMF元エコノミストのコッタレッリ氏に組閣のために招致。
ただし、議会で信任を得られない場合は再選挙となる。
また、五つ星運動のディ・マイオ党首は大統領の弾劾を要求。賛成が過半数となれば、イタリアの憲法裁判所が大統領を弾劾するかどうかを決定することになる。
コッタレッリ氏はIMF時代に公共支出の削減を進め、ミスター・シザーズ(はさみ)の異名をとった。
再選挙は早くて9月、来年初めになる可能性があるとされている。
そしてその選挙は、親ユーロと反ユーロとの対立が表面化するものであり、ユーロ離脱への可能性を高めるものになるということである。
市場の反応
政治情勢の混迷を受けて市場はネガティブな反応。
株価は下落、イタリア長期金利は上昇している。
この問題は短期的に解決する話ではないとも推察される。当面の間、相場の下押し圧力になりそうなリスクといえる。
その後のイタリア情勢①(18/6/2):とりあえず収束?
懸念されたイタリア情勢ですが、コンテ氏が首相に任命されるということでまずは収束?したようです。
金融市場を巻き込む混迷が長期化する最悪の事態は免れたという見方。概要は以下の通りです。
①マッタレッラ大統領はジュセッペ・コンテ氏を次期首相に任命
②焦点だった経済・財務相のポストには大学教授のジョバンニ・トリア氏を起用。トリア氏はEU懐疑派だが、ユーロ離脱は表明していない
③当初経済・財務相に任命される予定だったパロオ・サボーナ氏は欧州担当相に
④「五つ星運動」党首ディ・マイオ氏は経済発展・労働相、「同盟」のサルビー二書記長は内相に就く
⑤閣僚人事を変更することでいったんは収束したが、財政拡大したい新政権と難色を示すであろうEUとの関係悪化が懸念されている。
まだこの先のユーロとの関係に不安は残りますが、まずはサボーナ氏を経済・財務相から外したことで連結政権が発足することになったとのことです。
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