【ブログ】「米自動車関税引き上げならドル円はどう動くか」の概要とインプレッション


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同じくロイターの記事で「コラム:米自動車関税引き上げならドル円はどう動くか=尾河眞樹氏」について、興味深い内容もありましたのでご紹介いたします。

尾河さんは、ドル円は年末で115円。リスクオフが進んだとしても108円近辺までの円高だろうという内容を説明しています。


概要


<金融政策について>
・12―13日に行われたFOMCでは、今年2回目の利上げを決定。声明文も足元の景気に自信を示す内容
ECBは14日の理事会で、資産買い入れについて10月以降の規模縮小と年内の終了方針を決定
一方、15日の日銀金融政策決定会合後の黒田東彦総裁の会見からは、出口戦略の可能性は一切みられなかった
(金融政策に関する関連記事はこちらをご覧ください。)

<見通し>
・北朝鮮リスクは後退した上、各国の金融政策の方向性も明確になり、筆者は今年のドル円の年末予想値も115円で変えていない。

<リスク・波乱材料>
・ただ、もしも2018年後半に再び円が急騰するような波乱要因があるとすれば、どういったことが想定されるだろうか。
 1)米国発の貿易戦争
 2)米中間選挙の結果
 3)新興国通貨の急落
がきっかけになるとみているが、本稿では1番目の要因について考えてみたい。

<貿易摩擦の状況>
・米中間はすでに貿易戦争の様相を呈している。
カナダで行われたG7首脳会議でもトランプ大統領と他のG7諸国との間の溝が深まっている様子が露呈した。
カナダのトルドー首相は、G7終了後の記者会見で「米国の関税押しつけは侮辱的」と批判。
自動車に対する追加関税実施の可能性に言及。仮にトランプ政権が検討している25%の自動車関税が実施された場合、最も影響を受けるのは日本

<自動車関税の影響>
・米国の新車販売台数のうち、日本車の台数が1位でシェアは約4割近くを占めている。このうち約2割は米国内で生産
そのほか販売シェアの大きい、英国(約14%)、ドイツ(約8%)、韓国(約7%)も少なからず悪影響を受ける。
市場全体がリスクオフとなる中、急激に円高が進行する可能性はある。

<経常赤字問題>
・問題なのはトランプ大統領が経常赤字を問題視していること。
・米国の経常赤字拡大は、裏を返せば米国経済が良好であるということの証し。
・経常赤字を縮小せるための手段は以下の通り。
- 米国経済の減速によって内需が縮小するか
- 為替レートをドル安にするか
- 関税を引き上げて輸出競争力を高めるか

<ドル安は可能か?>
・米国は現在、利上げ局面にあるため、政策的に無理やりドル安にするのは現実的でない。
・その上、関税を引き上げたところで諸外国から報復関税を受ければ、必ずしも米国輸出企業にとってプラスとは言えない。

<関税引き上げは長期的にはドル高要因>
・仮に米国の追加関税が自動車に及んだとしても、リスクオフによってドル円が下落するリスクは一時的なもの。下落幅も限定的になるとみている。
・むしろ、関税の引き上げは、輸入物価の上昇につながり、インフレをもたらすため、米長期金利の上昇につながり、長期的にはドル高となる可能性もあるだろう。

<相場見通し>
・ドル円は年初から3月にかけて、113円台から104円台まで、約9円もの円高となった。
・市場参加者のポジションが円売りに偏っていたことが背景にはある。
・シカゴ通貨先物市場IMMの円ポジションが年初の段階で12万枚となっていたが、直近で約3000枚まで縮小
・米国の自動車関税引き上げが決定しても、ドル円が105円を割ることはないだろう。
・仮にリスクオフになった場合も、5月29日安値の108.11円付近、あるいは4月23日安値の107.63円では支えられるのではないか。


インプレッション


<ドル円について>
・年末の115円については何とも言えませんが、ドル円が105円を割ることがない、というのは一理あるかもしれません。
・以下の表は「IMM通貨先物ポジション」を表したものです。
この数値はヘッジファンドなどによる投機的なポジションを示しています。
下の表からはJPY Short、つまり、円を売っていた(将来円安になると思っていた)ポジションが大きくありました。
これが急落以降、急激な円の買戻し=円高を生み出す要因となった、ということです。
・現在はそこまでポジションを傾けていないため、大きく円高に振れることがないとしているのにはうなずけます。

IMM

<自動車販売について>
・日本が4割シェアで米国生産はうち2割とありましたが、残りは輸出分ということになりますが、これが関税の影響を受けると大きなダメージになると考えられます。
・鉄・アルミの対米輸出は年間約2200億円。日本が輸出する製品は米企業が代替できない高付加価値品が多く、「あまり実害がない」とされる一方、自動車は輸出台数の4割近くを米国向けが占め、輸出総額は約4.6兆円と輸出額全体の約3割を占めるそうです。自動車部品の対米輸出額も約9,000億円になるようです。(毎日新聞)
・自主規制をするにしてもインパクトは小さくないということになります。

<ドル高要因について>
・「関税を課すとインフレになり、長期金利が上昇して、ドル高になる」という記述がありましたが、インフレ要因になるのは確かで、利上げ要因となり金利は全般的には上昇すると思います。ただ、長期金利が上昇するかどうかは個人的には疑問に思いました。長期金利が上昇すればよいですが、逆イールドを進める要因になった場合、市場にもたらすネガティブな影響は強くなると推察されます。
(逆イールドに関する関連記事はこちらをご覧ください。)


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